母なる大地をキミに



さわさわと心地よい風がそよぐ。
崖のように削られた丘に腰掛け、異世界の風を受ける。
空は一日中赤く、元の世界のように青くはなかった。

こちらでは宇宙間を自由に行き来を出来るようで、きっとどこかに自分の世界と似た星もあるのかもしれないとは、頭の片隅で思った。


「自分の世界が恋しいか、


声がしたかと思い、横を向けば男が静かに降り立ったところだった。

「…ターレス」

バーダックと同じ顔、髪型をした褐色の肌をしたサイヤ人。

「恋しい、か…」

ターレスから前方に視線を戻す。

「当たらずとも遠からず、と言ったところだ」
「ほう?」
「あの場所が恋しいわけじゃない」

にとっての世界は、人だ。
大切な人たちが存在して初めて世界となりうるのだ。
あの星だけになら何の未練もないし、恋しさなど抱くこともない。

「けれど、」
「うん?」
「青い空は、たまに見たくはなるかな」

言いながらは惑星ベジータ特有の赤い空を見上げる。
夕方でもないのに赤い空。
血で染まったかのような空は、これまでサイヤ人たちが流させてきた血で染まったかのようにも思える。

自分の片翼と同じ、色。


「…この空も、嫌いではないけどな」

「お前の世界の空は青かったのか」
「晴れてるときは青かった」

「大地は?」

そうだな、とは記憶を掘り起こす。

「森が、多かった。良く動いてたのは森の中か、岩山だった。それから…」
「それから?」
「海があったな」

それならあるじゃないか、とターレスは遠くの海を見る。

「空が青いから、海も青いんだ」
「なるほど」

サイヤ人特有の尻尾がゆらりと揺れる。

「なぁ、

バーダックと同じ声色だけど、やはり少し違うな。
そんなことを思いながら、なんだと返事をした。


「星をやろうか」


ひゅ、と少し強めの風が吹いた。
横髪が顔にかかるのを気に掛けることなく、は意味も分からずターレスを見上げる。

「…は?」
「星だ」

すい、と宙に浮き、ターレスはの正面に浮かぶ。
翼もないのに自由に飛ぶことの出来る彼等。
いつ見ても不思議だと思えた。


「大地があり、森があり、そして青い空と、海がある星だ。お前の故郷に似た星をやろうか」


この広い宇宙に似通った星などいくらでもあるはずだ。
寧ろ、無数の星が散る宇宙でないほうがおかしいだろう。

「来週から、遠征に行く」
「……」
「そのとき星を探してきてやる。それでお前にやる」

星1つを自分に?
サイヤ人からすれば何のこともないのかもしれない、普通なのかもしれない。
しかし、自分の基準からすればどうすればいいのか分からない贈り物。

「…それ、貰った私はどうすればいいんだ」
「別にどうも。故郷を思って眺めようとも、お前の勝手だ。好きにすればいい。お前に贈るのだから」

あぁ、そうか、とは、はたと思う。

「もしかして、慰めてくれているのか?」
「そうだと言ったら?」

変わらず笑みを口元に浮かべているターレスに、は少し目を細める。

「そうなら嬉しい、けど」
「けど?」
「星は、良いよ」
「……?、何故だ?せっかくこの俺がプレゼントしてやるってのに」

「犠牲が大きすぎるだろ」

サイヤ人は地上げを生業としている。
星の生物を一掃して、異星人にその星を売る。
そんなサイヤ人が星を贈ろうと言うのだ。
星にいる生物を全滅させてからプレゼントしようという気に違いない。

それに、とは立ち上がる。

「だったら生き物はそのままに、」
「それでも、やはりいらない」

見渡す限りの赤い大地、赤い空、赤い海。


「ココも結構好きなんだ」


だから、別に他の場所は欲しいとは思わない。
青い空や海はたまに見たくはなるけれど。

「お前の言うココ、ってのは?」
「バーダックのいるところ」

しれっというをターレスは手を腰に当てて見下ろす。

「お前、アイツにべったりだもんなァ?」
「悪いのか」
「生意気に素直な奴」

クックと喉奥で笑えば、は眉を僅かにしかめて背を向ける。

「おっと、機嫌を損ねたのかよ。子猫チャン」

「同じ顔なのに、バーダックとはえらい違いだ」

「クク、そりゃあな。アイツと全く同じだなんて、願い下げだ」
「私もバーダックがターレスと同じだったら嫌だ」
「随分と嫌われたもんだな」
「自業自得」

つかつかとそのまま背を向けて歩き出すを見て、ターレスは軽く声を上げて笑う。

「あーあ、俺は結構好きなのによ」
「それはどーも」






私は好きじゃない  
「ついてくるな」
「行く方向が一緒なんだよ」



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あとがき

ターレス夢。トリップものでターレス<バーダックでした。
主人公はターレスを好きではないけど嫌いというわけではないです。

2009.10.3 海葉月葵