巡る、零れる、溢れる



はオラが物心ついたときからここにいた。
オラが生まれる半年くらい前に、父ちゃんと出逢ったのだと聞いた。

オラのことをは生まれたときから知っていた。
逆にオラはのことはあまり知らなかった。
昔の自分はとにかく無知で、について色々知りたかった。
だから、色々聞いていた。



はどっから来たんだ?」
「ずっと遠くから」
「この星じゃねぇんか?」
「だって、尻尾がないだろ?」
「あ、そうか」

サイヤ人じゃない。
だから、他の星から来たんだと納得した。
それがどこの星で、どうやって来たか何て、疑問に思わなかった。


には翼があんだな」
「そうだな」
「なんで片っぽしかねえんだ?」
「そういうものなんだ。みんな片翼だけ」
「他にも生えてるやつがいたのか?」
「いたよ」

の翼は惑星ベジータの空と同じで深紅だった。
片方しかないのがいつも不思議だったけど、とても綺麗だった。
何故かはその片翼のことを好いていないみたいだったけど、オラは好きだった。
他にも生えてる奴がいるって聞いて、と同じなんだと思って、ただ羨ましかった。
それだけだった。


はふろうちょうじゅ、ってやつなんか?それって何だ?」
「不老長寿。ずっと今の姿のまま、長く生きる者のことだ」
がそうなんか?」
「そのようだ」
「もう大きくなんねぇんか?」
「多分な」
「ずっとか?」
「分からないけど、多分、このままだ」
「そっかぁ」

それならすぐに追いつける。
よりもすぐに背が高くなる、大きくなれる。
そう思うと嬉しかった。



小さい頃は、ただそうとしか思えてなかった。
深く考えてなかった。

今は、身体も大きくなって、考えることも変わってきた。




はどっから来たんだ?』
『遠くから』

ここじゃない何処か。
ここの他に、故郷が、居場所がある。
いつか戻っちまうのか?
ここからいなくなるときがあるのか?


『みんな片翼だけ』
『他にも生えてる奴がいたのか?』
『いたよ』

仲間がいたのか。
ここじゃない、昔いたところで。
そいつらと会いてえんじゃねえんか?
もしかしたら、故郷で待ってんじゃねえんか?


『不老長寿。ずっと今の姿のまま、長く生きる者のことだ』
がそうなんか?』
『そのようだ』

オラはあの頃から随分大きくなって、を見下ろせるくらいになった。
片腕で抱き上げる事だって出来る。
でも、は変わらず、あの頃のままだ。

オラは、オラたちは、より先に死んじまうんじゃねぇんか?

それは、にとってキツイことなんじゃねぇんか?

だったらここにいるよりも、―――







「なぁ、

の髪はオラたちと同じ黒髪。
違うのは、猫みたいな縦長の瞳孔をした綺麗な青緑色の瞳。
曰く、魔晄色というのだそうだ。

「なんだ?」

魔晄色の双眸にオラが映る。

は、いつまでここにいんだ?」

はきょとんと首を傾げた。
これだけじゃわかんねぇよな。

は…別のところから来たんだろ?父ちゃんに拾われて…だから、」
「あぁ、そういうことか」

の瞳が若干揺れたのが見えた。
何を思ったのか、そのときはすぐに分かった。
違う、そういう意味じゃねぇんだ。


「安心しろ。お前達にとって都合が悪くなったら、私はいつでも出て行くぞ。迷惑になんてなりたくないからな」

「そ、そうじゃねえんだ!」
「…?」
「迷惑とか、オラ思ったことねえぞ。寧ろ、…えぇっと…」

頭の中でぐるぐると思考が巡る。
分からなさすぎて、眉間に皺が寄って行くのが分かる。

「カカロット?」


「な、あ…、」
「…うん?」


「おめぇ、どっから来たんだ?」
「え?」

遠くって何処だ?
すぐに帰れるくらいか、それとも何年もかかるのか。

「向こうに、仲間がいんじゃねえんか?」

オラたちじゃない。
がいた場所に、オラたちの知らない奴等が。

「そいつ等、を待ってんじゃねえんか?」
「シエンは会いてぇんじゃねえんか?」

時々、何処か遠くを見ていることがあることを知ってる。
故郷を、仲間を、思ってるんだろ?


「帰りてぇとか、思わねえんか?」


「…、」

黙ってオラを見上げる

ダメだ、止まらねえ。
次から次へと口から外で出ていっちまう。

、自分が不老長寿って言ってたよな?ずっと老いなくて、長ぇこと生きるってよ。それって、オラたちよりもか?」
「おそ、…らく、な」
「それって、を1人にしちまうってことか…?」
「……カカロット、どうしたんだ?いきなりそんなことを」


ぐるぐるぐるぐる。

「オ、ラ」


気付けば、己の腕の中にを抱き込んでいた。



「オラ、がすきだ」



もう一度、すきだ、と小さく零す。

「私もカカロットのこと好きだよ」

ぽん、と背中に小さな手が添えられる。

「…カカロット?」
「ずっと、最近、考えちまうんだ」
「うん?」

ぽん、ぽん、と宥めるように背を叩く
昔、オラが小っせえ頃に良くこうやってあやされてたことを何となく覚えてる。
オラはゆっくりと息を吐きながら、続けた。

「…いつか、」

が、いつか、いなくなっちまうんじゃねぇかってさ…考えちまうんだ」
「…」
「だから、いつまでいてくれんのかな、…って」

でも、言ったら本当にいなくなりそうで。
不安だった。
言えなかった。


「そりゃ、がそうしたいなら、って思うけどよ、でも」



「一緒にいてえんだ」


もっと、
いや、ずっと。

ずっと、一緒にいてえ。


いなくなって欲しくねえんだ。


ぎゅう、と力を込めるとじんわりとの熱が伝わる。

「…カカロット」
、オラ、」

「カカロット」

ぽん、と一層強く背が叩かれて、思わずビクリと身体を揺らす。

「落ち着け」
「…、」
「落ち着け。カカロット」
「オラ、!」
「カカロット!」

強く言われて押し黙るしかなかった。

いなくなっちまうのか?

いつ。
いつだ?
1年後?
半年、1ヶ月、1週間。
もしかして明日か?

これほど不安に支配されたことはない。
言えば言うほど不安が溢れ出てくる。
オラ、どうしちまったんだ。


「どうした、らしくないな」
「…」
「カカロット。…私が出て行くときはな」



「お前達が私を邪魔だと思ったときだ」





え、




「……、」


オラはやっと、を抱く力を緩めて、の顔を見る。
逆だ、とは言った。

「逆なんだよ。出て行くのは、私から思ったときじゃなくて、お前達がそう思ったときだよ」

ちょっと困ったように笑う

「私は、カカロットのこと好きだからな」

だから、お前がそう言ってくれる限りずっといるよ、とは笑った。

すっと肩の力が抜けた。
不安で仕方なくて重たかった頭も、一瞬ですっきりした。

の言う「好き」がどういう意味なのか知ってる。
はみんな好きなんだ。
父ちゃんにもブロリーにも兄ちゃんにも、みんなに「好き」だと言ってる。
ターレスにだけは言ってねえみたいだけど。
でも、今はそんなことはどうでも良くて。

ただどうしようもなく、愛しさだけがこみ上げてきて。

すきだ。
すきだ。
すきだ。


大ぇすきだ。


そう思うと止まらなくて、


「おめぇが父ちゃんとこに来てくれてホント、良かった」


それを嬉しそうに受け止めてくれるが無性に愛しくて、愛しくて。



無心に抱き締めた。  

「父ちゃん!父ちゃんはが邪魔とか思わねえよな!?」
「……は?」
「ここを出るなら俺のとこに来たら良い」
「てめ、ブロリー!ダメだ!はうちにいんだ!」
「…つーか、邪魔だったら最初から拾ってねーよ」
「バーダック…!(ひしっ)」
「あー!!」「…!!」



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あとがき

あれ、何かバダオチ?(笑)カカ夢でした。
何かカカが病んでる感じになりましたが、最後はいつものようにほのぼのです。


2009.10.13 海葉月葵