十八話
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あれから、数週間が過ぎた。




その間、ルキアが好んでの元へ来たりしたので、以前よりも大分親しくなった。

も、何度も何度も恋次の名前を聞いたのもあって、どうにか彼の名を覚えることができた。






そんな平凡な時が流れていた。




















「今日は殿はどうしたのですか?」








の隣を歩いていたルキアが問うてきた。






今日の分の仕事をやり終えて、先ほど偶然会ったのだ。

故意的に来ることがよくあったのだが、今日は本当に偶然なのである。




ルキアの問いに対し、は淡々と答えた。




「五番隊と合同演習、だそうだ」


「あぁ…、なるほど…。それで1人だったのですね」


「あぁ」




しばらく歩いてルキアは首を傾げた。

仕事は終わった様だったのだが、の足は外ではなく更に奥へと進んでいた。




「あの、殿」




ルキアが呼ぶとは“何だ”と聞く代わりに顔を彼女の方へ向ける。

それが返事と同意だとルキアは知っていたので、続きを口にした。




「どこへ向かってるのですか…?」


「…資料室だ」


「資料室へ用が…?」


「あぁ」




相変わらずの抑揚に欠ける声で答える。

どういう用事があるのか気になるのでルキアはそのままの後に着いていった。

しかし、最後までそれは叶わなかった。




「…ルキア」




がふいにルキアの名を呼んだ。

ルキアは呼ばれてそちらを向く。

それを気配で察知したは返事を待たずに続けた。




「資料室には1人で行きたい」


「……え、」


「悪いが…、着いてくるのはここまでだ」


「あ、…すみません…。じゃあ、また…」




ルキアはぺこりとお辞儀をすると、踵を返し、もと来た道を戻っていく。

は、何かを思い出したかのようにルキアの背に声をかけた。







「ルキア」







凛と響く声で。

何かとルキアが振り向くと、は言った。




「このこと、には言わないで貰えるか」


「え、何故…」


「人にあまり知られたくない」




それだけを言うとは再び奥へ歩み始めた。

ルキアは再度首を傾げる。








知られたくない。






一体、何をしようというのか。






資料室に行くくらい、別に恥ずべきことではないのに。











ルキアはわからない、という風な表情を浮かべ、と逆方向へ歩いていった。



























知られたくない。





それは、自分1人の問題だから。










そう思うからこそ、今日は斬魄刀を腰に差してない。

部屋に置いてきたのだ。

誰にも知られたくないことだったから。





はある扉の前で立ち止まる。

そこに掛けられた札には“資料室”とあった。

その名の通り、尸魂界の資料が置かれているところだ。

図書館等と同じようなものと思えば良い。




は扉に手を掛け、静かに開けた。

部屋の中には人の気配がなかった。

基本的に持ち出しは禁止。

持ち出す際は、隊長格などの上官に予め言っておかなければならない。




その静まりかえった部屋の中には足を踏み入れる。

自分の足音が鮮明に聞こえてくる。

このような空間は嫌いではないな、とは思う。












「さすがは…、資料室と呼ばれることはあるな…」






本棚にズラリと並ぶ書物の数々。

全てに目を通すことはかなり無謀なことであろう。

いつになったら終わるのか検討もつかない。




は、書物の背表紙に視線を向けたまま、本棚沿いに奥へと足を進めていった。

目的のものを見つけるまで。

が、目的のそれは案外容易く発見することができた。

は迷うことなく、その書物を本と本の間から抜き取る。







タイトルは『虚全集』







全集ということはないだろうが、今まで倒してきた虚の記録である。

平死神たちにも閲覧出来るようになっているのだ。

は、綺麗に掃除された床に腰を降ろし、本を開く。




パラ…、パラ…と書物のページを捲る音だけが辺りを支配する。

目を通していくと、様々な虚を目の当たりにする。

角があったり、舌が異様に長かったりと様々な格好の虚。

能力も知られる限りのことが書いてある。

その虚を倒した死神の名前も。





「……どれも違う…」




はポツリと言って、書物を閉じ、もとあった場所に戻す。

そして、また違う書物を手に取る。


虚全集は1冊だけではない。

倒した数だけページも増える。

よって、書物の数は段々と増えていく。



2冊、3冊、と蕎氷は次々と書物に目を通していく。

以前にもはここに来ていた。

そのため、が今までに見た書物の数は有に20は越えていた。








今日、5冊目の書物を開いていて、の手と視線がピタリと止まった。

あるページを凝視している。




の口からは音は漏れず、口の形だけがその形状を表していた。


















“……こいつだ……”














はそのページをゆっくりと見る。

虚の名前。












ソウル・パラサイト












容姿も画像付き。

忘れるはずのないその形状。




漆黒の胴体に、真紅の刺青が特徴のその虚。








しかし、それだけだった。


ソウル・パラサイトの説明はそれだけ。

他は……
















不明



















能力も、何もわかっていない。



それは倒されていない証。


まだ、この世界のどこかに身を潜めている証。















「……っ、くそ…」




は自然な動きで己の右肩を手で押さえる。

キリ…、と小さく歯噛みする。

やっとわかると思った。


ここに来れば何かわかるのではないか、と。




が、わかったのは名前のみ。










この右肩に派手な爪痕を残したあの虚の能力は不明。

居所を掴むヒントさえ掴めなかった。




「居場所は…、虚同士でないとわからないということか…」




は書物に描かれた虚を忌々しげに睨んだ。















は、右肩から背中に流れる大きな爪痕が残っている。






これは十数年も昔に虚によって付けられたものだ。

以前、四番隊で卯ノ花が言った通りだったのだ。



この爪痕に対し、可笑しいと感じたのは傷を負ってしばらくしてからのこと。

普通の傷ならすぐに癒えるはずが、この爪痕は一向に消える気配がなかった。

あの頃はそれしか思っていなかった。



だが、時が経ち、真央霊術院に入ってから、その疑問は更に深まることになった。










可笑しいのだ。







今、この時まで傷が消えないことが。






何故か。







それは、














が爪痕を負わされたのは、――――生前だったから。







つまり、まだ生身の人間であったときの出来事。







可笑しくはないだろうか。







生身の肉体に負わされたはずの爪痕。

それが何故、死して今も尚、残っているのか。



は自分なりに解析していった。

ありうる可能性すべてを。

おそらく、ソウル・パラサイトの能力は肉体でなく、魂魄そのものを攻撃するものなのだろう。

それならば、死んでも爪痕が残っていても可笑しくはない。






だが、すべてわかったわけではない。





確信が持てているわけではない。






最大の謎は、この残った爪痕。

この爪痕は残っているだけではない。

あるほぼ一定間隔で、痛みを伴うのだ。

それはまるで生きているかのように脈動する。

そのように感じるのだ。





しばらくその場にいたは、ふと目に入った本を手に取る。




「姿がわかっているなら……」




それを確認した死神がいる。

確認した日時もわかるはずだ。



それはまた、別の書物に載っていた。

は目的のものを発見した。

は問題のページに目を通し、軽く目を見張った。




「…これは…、」




静かに瞼でその深い蒼の瞳を隠し、はフッ…、と自嘲じみた笑いを漏らす。

これがどこから来るものなのか、よくわからない。

自分の愚かさを笑ったのか、虚に対し笑ったのか。








「どうやら…、私はとんでもないものを追っているらしい…」

















ソウル・パラサイト














確認日:約100年前








能力不明








生息地不明



















虚との戦闘後の生存者      0名

















ソウル・パラサイトと戦闘をし、生き残った死神は誰1人としていなかった。






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あとがき

文ばっかですみません。
オリジナル虚登場です。
ソウル・パラサイトという…黒地に赤い刺青と、私の趣味入ってます(爆

説明文も凄い微妙な…、勢いで書いたせいです、きっと;
曖昧でもこんな感じなのかな、とわかっていただければ幸いです。
ていうか、資料室とかあるかもわからないところで…
虚全集ってなんだよ(作者の心境
記録みたいなのがある設定で。

セリフある話を次は書きたいですね…