十九話 ――――――――――――――― 現世。 その町並みをぼんやりと眺めつつ、は短く息を吐いた。 現在、は十一番隊と五番隊による合同演習に参加中である。 たまに聞こえる更木の怒鳴り声が聞こえては、呆れたように肩を竦めていた。 どうしてこんな簡単なことができないのか、と。 演習の内容は、にとって優にこなせることであった。 これなら一角等と居残り組になっていれば良かった、と演習が始まって数分で思った。 「これで巨大虚とかバーンと出て来たらなぁ」 少しは楽しめるだろうに。 「何、物騒なこと言ってやがんだ、テメェは」 「うわっ、更木隊長!」 「大体てめぇは、新人の世話してろっつたろーが。さっさと戻れ」 「へぇーい」 更木がの背を押すので、は渋々持ち場に戻った。 が、面倒くさそうにしているのにはもう一つ理由があった。 それは五番隊副隊長である市丸のこと。 演習なので、おそらくいるだろうと思っていたのだ。 しかし、市丸はいなかった。 聞けば遂この間、三番隊隊長に昇進したとのこと。 となれば、市丸は演習ではなく、尸魂界にいるということで。 も理由がなければそこにいるであろう。 2人が、自分なしで同じ場所にいる。 市丸はを気に入ってるようだった。 会いに行く確率は低くはない。 の所属は白哉率いる六番隊なので、大丈夫かとも思っている。 が、やはり気になる。 「だぁーー!!くそっ!!!」 は思いっきり、斬魄刀を地に向かって振り下ろす。 むしゃくしゃしている時にはこれに限るのだ。 「早く終われ!!!」 ブンッ 「ぅおっ?!!」 「……ん?」 は斬魄刀を振り下ろした方向、つまり下を見る。 なにやら、斬魄刀の振り下ろした効果音以外の音が聞こえたからだ。 視線を下に向けると、そこには見慣れた姿が。 特徴的な赤い髪があった。 「あー…えーっと……、あばら骨?」 「阿散井、阿散井、阿散井!!!近いようだけど、全然違いますから!!」 地についていた腰を上げ、バッと立ち上がる。 は、悪びれた様子もなく、あはは、と笑う。 「悪い悪い。えーっと、あばら骨恋次だっけ?」 「…阿散井恋次です。何で言った傍で間違えるんスか」 「俺記憶力悪いから」 「記憶力がどうのって問題じゃない気がするんスけど」 恋次が呆れ気味で言った。 一時は覚えていた恋次の名前をは少し頭から離れていたせいで変な名前で出てきてしまったようだ。 「まぁ、細かいとこは気にすんなよ。もー面倒だから恋次って呼ぶからな」 「……良いっスけど、別に…」 「あ、そうだ…」 恋次が短く息を吐きつつ、何かを諦めた感じのときだった。 が何かを思い出したかのように問うてきた。 「あのさぁ、ここの隊長って藍染隊長だったよなぁ?」 「そうっスけど。それが何か?」 「藍染隊長のことどう思う?」 「……へ、?」 予想もしていなかったのだろう。 恋次の口から気の抜けるような声が漏れた。 「だから、お前から見て藍染隊長ってどうなのって話だよ」 「な、何でいきなり…」 「なんつーか…、がさぁ…妙なこと言っててさぁ……」 「妙なこと…っスか?」 はコクリと頷く。 「…なんか、藍染隊長が偽善者ぶってるー…みたいなこと」 「…はぁ…?」 「嫌な感じがすんだってよ。いい人のように見えるけど、それは自分の正体を隠すためじゃないのか、とか」 最初は嫌悪感などなかったらしいが、会うごとに疑うようになった。 本当にこれがこの男の本当の姿なのだろうか。 裏があるのではないか。 優しげな人格の奥底にどす黒い物が隠れているのではないか、と。 「あいつ、俺よりもそういうのに敏感なんだよ」 「そうなんスか…でも、俺にはそうは見えないですけど」 「だよなぁ…、俺もよくわかんねぇんだよな」 が顎に手をやりながらそう言った。 が嘘を言ってるとはまったく思っていない。 しかし、どうも理解できない。 人の裏とかそういうのを見破るのは不得意なのだ。 「市丸はすぐに分かったんだけどなぁ」 「へぇ」 そんな会話をしていると、後ろから高めの声がした。 「阿散井くんっ!!!」 振り向いてみれば、少女と恋次と同じくらいの体格の男がいた。 「うぉ、雛森に吉良…!」 「知り合い?」 「知り合いって同じ隊の奴だから当然でしょう!!」 「あ、そっか」 は呆気からんと言って退ける。 強いのだが、どこか抜けているので本当に凄いのかわからなくなりそうだった。 雛森がを見て、目を見開く。 「あ、あのときの…!」 「へ?」 吉良も思いだしたかのように言った。 「本当だ…、そう言えば十一番隊って言ってたような…」 「………」 「あのー…?」 考えた風になったに恋次は声をかける。 雛森も吉良も不思議そうに見ている。 「全っ然覚えてねぇ」 「そんなこったろうと思いましたけどね」 ハァ、と呆れたように恋次は息を吐いた。 それも段々慣れてきた。 最初もそう思ったが、は大分気安い性質のようだ。 「つーか、よく覚えてんなぁ。そんな昔のこと」 「結構印象的だったと思うんスけど」 「私もそう思います……、って阿散井くん!」 「何だよ」 「せっかく呼びに来たのに、何してるのっ!」 「そうだよ。指示通り動いて貰わないと…」 雛森と吉良が共に恋次に説教じみたことを言い始める。 面白いなぁ、と見ているとこちらにも同じことが起こった。 「!!!テメェ何度言ったらわかりやがる!!!」 が、バッと振り向くと更木がこちらにズカズカと向かってくる。 見れば、恋次らは思いっきり驚いていた。 「やっべ、見つかった」 言うと、はそこから離れようとした。 「じゃーな!頑張れよー」 「え、あの、行かないんスか?!」 「説教嫌いだから!」 ケタケタと笑いながら言って、は更木の来る方向と逆に走っていった。 後ろから更木の怒鳴り声が聞こえてくる。 更木は恋次ら3人の前を通り過ぎ、終いにはを追うため走り出した。 「なんか…、凄い人…だったね」 「…うん」 雛森が呆然として言うと、吉良もそれに同意した。 ―――……凄い、というか馬鹿なんじゃないのか。 恋次はただ1人、声に出さずそう考えていた。 その頃、尸魂界ではまた違う波乱が起ころうとしていた。 六番隊詰め所に、滅多に来ないであろう人物が隊首室へ赴いていた。 人間には見えないような顔立ちをした死神。 十二番隊隊長 涅マユリ。 その傍らには副隊長である涅ネム。 目の前には白哉がいた。 「一隊長が直々に、一体何の用だ」 白哉がいつも通りの態度で言った。 「何…、直接返事が早く欲しくてネ。ただそれだけだヨ」 独特のしゃべり方でマユリは言う。 その言い方からして、何か頼み事のようなものだろう。 隊長自ら了承を得ようとは、どのような用件なのか。 「用件は、」 「さして難しいことではない。六番隊の隊員を貸してほしくてネ…」 白哉は疑問を抱く。 何かのための援助要請だろうか。 それならば、何も隊長自ら来ずとも良くはないだろうか。 「何も私のところでなくとも…」 「この隊の者が良いのだヨ」 白哉が言いかけるとマユリがそれを遮り言った。 「…何か理由があるようだが」 「何、ただ私が借りたい者がこの隊にいるだけのことダ」 「その者とは…、?」 マユリは口元を歪め、ニヤリと笑った。 「……… 、という娘だヨ…」 ――――――――――――――― あとがき 久々の更新。 ヒロイン2ばっかですけどね。 恋次ら元五番隊メンバーとの絡みでした! ヒロイン2は動かしやすくて良いですね。 楽しく書けます(笑) 最後はヒロイン1関係で! マユリ様登場ー!これから活動していただきます。 何か欲しがられてますね。 兄様と、マユリ様のやり取りは本編ではないので、どんな会話するのかわからず苦戦しました。 特に兄様が。 これで良かったんだろうか…;; 藍染に関しては、本誌を読んでる方ならわかるかな、と。 原作沿いを書くかはわかりませんが…; これが終わらない限り無理ですね; えーっと、次はヒロイン1中心に行きますね。